さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
無事なことだけ確認すると、サジは侵入した何者かとにらみ合う。
「貴様、何者だ」
たいした声量があるわけではない。
しかし、空気を震わせるような気迫のこもった低い声は、
それが自分に向けて発されたものではないとわかっていても、
レイラの体を凍りつかせるほどに殺気を含んでいる。
レイラは寝台の上で思わず毛布を握り締めた。
背中にレイラを庇い、サジは敵に剣を向けている。
暗がりで相手の顔は判然としないが、身動きせずこちらの様子を窺っているようだ。
いや、逃げたくても逃げられないのかもしれない。
サジに睨まれて動けないのか、
あるいは、背を向けたとたん斬りつけられる事を予想して。
じりじりと足裏を滑らせ、サジが敵を壁際に追い詰める。
石になったように指一本動かせず、
レイラは緊張したままその成り行きを見守った。