さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「どうして?どうして私を助けてくれるの?
だって、お互いのことには無関心でいる約束でしょう?」
口にしてから、言わなければ良かったと思った。
さっきはっきりと宣言したではないか。
“利用価値”--自分にどれくらいそれがあるのか知らないが、
サジにとってはそれが全てだ。
多分、侍女と同じ程度には自分にもその価値があるに違いない。
わかってはいても、サジの口から聞きたくはなかった。
止めようと思えば思うほど、どこにそれが溜まっているのかと思うほど、
大量の涙が後から後から滴ってくる。
すぐ前にいるサジの表情を読むことすらもできない。
けれどその方がいいのかもしれなかった。
きっと呆れているに違いない。それを見ればまた落ち込んでしまいそうだから。
ふと、心地よいぬくもりが首筋に落ちてきた。
「どうしてだろうな」
今までよりもずっとゆっくりとかけられた言葉は、温かみのある声音だった。
(つづく)