さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
地平線に光が突き抜け始めると、
大勢の人間が列を成して順番を待っている姿が徐々に浮かび上がる。
その多くが荷馬車を引き、荷台にはそれぞれが売りにする物品を山と積んでいる。
目指す先まで続く人の波を見て目を丸くしたカマラに、ユーリが声をかけた。
「リアの都に来るのは初めてかい?すごい人で驚いたろう。
門をくぐったら、その整然とした街並みにもっと感動するよ」
「・・・初めてではないわ」
「え?来たことがあるのかい?」
カマラが住んでいたのは、レガ国とリア国の国境付近のはずだ。
ジマールの屋敷からもさらに南、かなり辺鄙な田舎でここまで相当な距離がある。
途中にいくつかの街もあり、よほどの用事がなければここまで来ることはないだろう。
不思議そうな顔をしたユーリに、カマラはそっけなく答えた。
「昔、住んでたから」
「住んでたって、この城下町に?」
「昔は、街に入るのにここまで厳重な検査はなかったわ。
だから、こんな行列を見るのは初めてよ。それでちょっとびっくりしたの」