さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
カマラは右肩を動かして背に抱えた荷を持ち上げなおした。
その中には、レガ国のさらに西に位置するトアニア国で織られた色とりどりの布がぎっしりとつまっている。
何か言いたそうなユーリの視線を無視し、まっすぐ前を見詰める。
その様子に、ユーリはそれ以上何も訊かなかった。
太陽が顔を見せる前から並んでいたカマラたちに順番が巡ってきたのは、
すでに昼をとうに過ぎた頃になってからだった。
大人数だと目立つため、ユーリの兵士たちは何組かに分かれている。
そのため、今はカマラとユーリ、それに壮年の男の3人だ。
一家で商いを行っているという設定で、背に荷物をしょい徒歩でここまでやってきた。
布地を仕入れたリア国の行商人に扮するのは特に難しいことではなかったが、
無事に門を通過するまでは気が気ではない。
厳しく調べられた結果、特に何事もなく通行が許可された。
どうやら、ユーリが手に入れたという通行証は本物だったらしい。
・・あぁ、覚えてるわ。
門をくぐり街に足を踏み入れたとたん、
見下ろすようにそびえているリア城が目に入り、カマラの胸に懐かしさが押し寄せた。