さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ジマールの言葉は、従わなければ家族の命がないことを意味する。
求められる返事以外、発さないように気をつけていたレイラは、
「一つだけ、お願いがあります」
と、意を決して願い出た。
「なんだ」
「最後に一目、みんなと会わせてはもらえませんか?
無事な姿を確認してから、出発したいのです」
ジマールとの取引は、期限が設けられていなかった。
王子の花嫁になれば、本当の家族と会う機会はなくなるかもしれない。
そう、ひょっとしたら、一生。
レイラが考えていることと同じ事をジマールも考えていたのだろう。
足元を見られ、不利な条件を出されるのかと不快感を示していたジマールは、
レイラの言葉にじっと考え込んだ。
「いいだろう」
予想外のレイラの顔が、ぱっと華やぐ。
「あ、ありがとうございます!!」
自分の娘と同じ歳のレイラのうれしそうな顔に、ジマールは、一瞬眉根を寄せて複雑な表情をした。