さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「ユ、ユーリ様・・・」
一緒について来た男がカマラの迫力に押されるように、ユーリの袖を引く。
城を眺めたまま会話をしていたユーリは、
“あっちを見てください”と顎で指された方に目をやり、ぎょっと肝が冷えた。
怪物と喧嘩ができるほどの形相で、自分を睨む女性らしき人物が一人。
「あぁ、いや。その・・・大丈夫!
レイラと一緒に行った男は、サジっていうんだけどね。
そう簡単に殺されるような玉じゃないっていうか。しぶといっていうかなんというか」
必死な言い訳が功を奏したのか、
腰に手をやり仁王立ちになっていたカマラの吊り上った目じりが緩み、わずかに瞳を伏せた。
「あなた、本当に妹を助ける気があるの?」
「そりゃ、もちろん。俺は正義の味方だからして」
「茶化さないで!」
下を向いていた睫が、きっ、と持ち上がると、
濡れた瞳がユーリを捕らえた。