さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
レイラはそっと侍女の様子を窺う。
暗くてわからないが、じっと座っているのだろう。気配を感じる。
やがて、静けさが闇にしっくりと溶け合った。
どれくらいたったのか、時の感覚がなくなり始めた頃、
レイラは胸の中にしまっていた紙片を寝台の上にそっと置き、
そのまま侍女が座っているのと反対側の床に、慎重に転がりながら滑り落ちた。
そのまま息を詰める。
月明かりが窓から入り込んでいるのを見て、
レイラは心臓が飛び上がる。
闇になれた目をこらせば、自分の姿が丸見えのように思えた。
だが、人の動く様子はなく、ただただ静けさが広がっている。
レイラは慎重に寝台の下にもぐりこむと、手探りで扉を探した。
初めてサジが忍び込んできた時に、どうやって出入りしたのかは教えてもらっている。
敷かれた布をはがすと、指を引っ掛けるような穴があり、
人差し指と中指でそっと持ち上げると、引き戸のように床板がずれ、
音もなく暗闇が湧いて出た。