さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
一瞬、レイラの動きが止まった。
本当に、このまま城を出ていくべきなのだろうか。
ソリャンに、あるいはサジに一言相談した方が良かったのではないか。
それでもやはり彼女が出した結論は一つだった。
家族を失った以上、ここにいる権利も義務もない。
昼間のうちに寝台の下に隠しておいた手燭を手に取ると、
レイラはさらに深い闇へと足を滑り出した。
部屋の隅に控えていた侍女は、
パサリ、と布の広がるような音を耳にして、目を開いた。
とっさに自分が寝ていたことに気づき、あわてて寝台に目をやる。
明かりを消したせいで、月の見える窓際だけがやけに目立ち、
それ以外の場所はまるでぽっかりと穴が開いたように暗いが、
特に変わったことは無さそうだ。
交代でとはいえ、夜にも起きてついてなければならないなんて。
重くなる瞼をこすってはみたが、光のない場所では睡魔の誘惑に勝てそうもない。
警備も厳重だし平気だろう。
女はもう一度目を閉じ、今度は椅子に深くもたれかかった--。