さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「すごいな」
思わず感嘆の声がついて出る。
それもそのはず。
まさか半日かけて地下道を歩き、城に入るなんて想像もしていなかった。
レガ国にも似たような秘密の抜け穴はあるが、
せいぜい城から外の敷地に出るくらいのものだ。
街のはずれにまで延々と地下通路が続いているなんて事を知れば、
その上に暮らす人間はさぞかし驚いて、顎をはずすに違いない。
ユーリの目の前で、先頭をきって進む金色の髪束が炎に照らされ揺れている。
じっと眺めていると、その髪が突然跳ね上がって回転した。
拍子に、ユーリは持っていた手燭を落としかけて、必死に掴みなおし、
なぜかそのまま両手を挙げ降参の合図を送った。
「な、何?俺まだ何もしてないよ。
そりゃ、ちょっと髪に触ってみたいと思ったけど、まだ実行前だし。
この前みたいに転んだけど、押し倒してないよ。
だって、直前でカマラが避けただろう?
鼻は痛かったけど、泣かなかったし。ちゃんと手燭は守ったし」