さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

「すごいな」


思わず感嘆の声がついて出る。

それもそのはず。

まさか半日かけて地下道を歩き、城に入るなんて想像もしていなかった。


レガ国にも似たような秘密の抜け穴はあるが、

せいぜい城から外の敷地に出るくらいのものだ。

街のはずれにまで延々と地下通路が続いているなんて事を知れば、

その上に暮らす人間はさぞかし驚いて、顎をはずすに違いない。


ユーリの目の前で、先頭をきって進む金色の髪束が炎に照らされ揺れている。

じっと眺めていると、その髪が突然跳ね上がって回転した。


拍子に、ユーリは持っていた手燭を落としかけて、必死に掴みなおし、

なぜかそのまま両手を挙げ降参の合図を送った。


「な、何?俺まだ何もしてないよ。

そりゃ、ちょっと髪に触ってみたいと思ったけど、まだ実行前だし。


この前みたいに転んだけど、押し倒してないよ。

だって、直前でカマラが避けただろう?

鼻は痛かったけど、泣かなかったし。ちゃんと手燭は守ったし」


< 216 / 366 >

この作品をシェア

pagetop