さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

***

かびと埃の匂いが鼻を突く。

薄暗く狭い部屋は、いるだけで気分がめいりそうだ。

細めた目に飛び込んだ懐かしい顔ぶれに、レイラは歓喜の声をあげた。


「お父さん!お姉ちゃん!みんな!」


駆け寄ったが、格子に邪魔されてレイラが家族と抱きつくことはできない。


「レイラ!無事だったのね!」


カマラは駆け寄るレイラの顔を真っ先に見つけると、大きな声を上げた。


「おぉ!レイラ嬢ちゃんか!」


「隊長!ミゲル隊長!レイラだ、無事だぞ!」


カマラの声を受けて、ホックとリュートが声を上げる。


葬式のように静まり返っていたその場所が、急に活気づいた。


「みんな、無事なのね?お姉ちゃん、怪我は大丈夫?」


格子から伸びたカマラの長い指が、レイラのほっそりとした頬に触れると、

レイラの大きな瞳が瞬く間に潤んだ。

とめどなくあふれる涙を止める術も見つからず、レイラはカマラの指に自分の指を絡ませた。


「レイラ、か?」


「お父さん!」




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