さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
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かびと埃の匂いが鼻を突く。
薄暗く狭い部屋は、いるだけで気分がめいりそうだ。
細めた目に飛び込んだ懐かしい顔ぶれに、レイラは歓喜の声をあげた。
「お父さん!お姉ちゃん!みんな!」
駆け寄ったが、格子に邪魔されてレイラが家族と抱きつくことはできない。
「レイラ!無事だったのね!」
カマラは駆け寄るレイラの顔を真っ先に見つけると、大きな声を上げた。
「おぉ!レイラ嬢ちゃんか!」
「隊長!ミゲル隊長!レイラだ、無事だぞ!」
カマラの声を受けて、ホックとリュートが声を上げる。
葬式のように静まり返っていたその場所が、急に活気づいた。
「みんな、無事なのね?お姉ちゃん、怪我は大丈夫?」
格子から伸びたカマラの長い指が、レイラのほっそりとした頬に触れると、
レイラの大きな瞳が瞬く間に潤んだ。
とめどなくあふれる涙を止める術も見つからず、レイラはカマラの指に自分の指を絡ませた。
「レイラ、か?」
「お父さん!」