さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
扉に耳をつける。何の気配もしないが、ひょっとしたら兵士がいるかもしれない。
これ以上はないくらい、のろまに取っ手を回す。
わずかにできた隙間から覗いた景色は、ぽっかりと開いた穴倉のように真っ暗だった。
今度は、顔が入るくらいに扉を開いたがやはり暗くてよくわからない。
確かなのは、廊下ではないということだ。
部屋の外であれば、必ず明かりがあるし、兵士もいるはずなのだ。
続きの間なのかもしれない。
レイラは誰もいないのだろうと判断すると、
扉をそれ以上開かず、薄い隙間に器用に体をねじ込んで、その空間に足を踏み入れた。
嫌いなはずの暗闇が、今はありがたい。
レイラは手の甲で滴り落ちる汗を拭った。
・・ここは、何の部屋なのかしら。
目が慣れず手探りで一歩踏み出した、その瞬間。
「かかったな」
男の低い声と、左右から挟まれるように交差する剣の光を同時に認識し、
レイラは全身が痺れて立ちすくんだ。
(つづく)