さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
サジは迷っていた。
数刻前に会ったレイラは情緒が不安定なように思えた。
もちろん、世界が崩壊するほどに色々な出来事が一気に押し寄せてきたのだ。
平凡な少女にとっては、大波にさらわれたようなものだろう。
誰かにすがって泣きたくなるのも無理はない。
しかし、それでもサジは気になっていた。
自分から体を離し、最後に見せたレイラのさびしそうな笑みの向こうに、
一線を画されたような、いつもとは違う何かを感じていたからだ。
・・どうする?この時刻では正面から訪ねるわけにもいかない。
自分にぴたりとくっついてくる見張りを出し抜き、
抜け道を使うのは、あまりに危険な行為だった。
自分が秘密の通路を見つけたのだと、ソリャンが確信した可能性は五分だ。
あの時レイラの部屋の見張りの兵士がいなかったというのはたんなるでまかせだが、
兵士が持ち場を離れて遊んでいたという話は、ある意味説得力があったに違いない。
その証拠に、今日はレイラの部屋を見張る兵士の顔が入れ替わっている。
まだ、自分は疑われている段階なのだ。
・・どうする?
サジはもう一度問うと空を見上げた。
心なしか、月がいつもより愁いを帯びて見えた。