さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
レイラの父の頬はこけ、髪の毛がすっかり白くなっている。
地面に這いつくばり、芋虫のように這ってレイラの近くまで来た。
わずかひとつきの間に、10歳も老け込んだような顔つきだ。
「レイラ・・・」
「お父さん。足の怪我がよくないのね」
兵士に囲まれて落馬し、その上を馬が駆けたのだという父の足は、いまだに一人で体重を支えることができないままだ。
「すまない、レイラ。お前をこんな目にあわせて」
力なく言葉を発する父を見て、レイラは涙を拭った。
「必ず、必ず皆を助けるから。だから頑張って」
甘えん坊な妹が発した言葉に、カマラは違和感を感じる。
「レイラ。あなた何をするつもり?」
カマラは眉間に皺を寄せ、レイラに手を伸ばした。
自分たちにさえどうにもできないことを、非力な妹がどうにかできるわけがない。
だが、レイラはにっこりと微笑んだ。
力強ささえ感じさせるほどの笑顔。
「明日、お城に行くの。だから、しばらく会いにこれないけれど心配しないで」
何のことだと問う前に、見張っていた兵士がレイラと父の間に割り込んだ。
「時間だ。部屋へ戻れ!」
何度も振り向きながら、レイラはその場を離れた。
「おい、あの連中を、もう少し広い牢へうつしてやれ」
影で様子を窺っていたジマールが、見張りの兵士に告げた。