さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
同じ頃、可能な限り気配を消し、しかし周囲への神経はできるだけ尖らし、
アリのように穴倉を行進する者たちがいた。
先頭のナリは前方に人の気配がないかに細心の注意を払い、
それに続くカマラは左右の壁や天井を観察し、
お尻についたユーリは後方に配慮する。
城に入るまでは土が掘られた地下道だったが、
城の内部に入ってからは、壁と壁の隙間や、天井と床の隙間にいるのだろう。
石造りの狭い通路へと変化していた。
随所に階段があり、上の階にも簡単に行き来できるようになっているらしいと、
先に下見をすませたナリが報告した。
階下には扉がほとんどなかったが、上へ上へ、奥へ奥へ進むにしたがって、
同じような間隔で、いくつもの扉や階段が並んでいる。
・・なるほど、この辺りから王族の領域って訳か。
ユーリはサジと連絡を取る方法に頭をひねったが、
やはりレイラの居場所を特定して渡りをつけるのがもっとも確実だろうと思い始めていた。