さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「ねぇ、どこかの扉を覗いてみないの?」
「レイラの部屋を探すのは、全体像を把握してからにしたほうがいい。
万一見つかった時に、逃げ道がなくなる」
囁くように漏らした言葉に覗いた焦りを、ユーリに切り捨てられた気がして、
カマラは後ろを振り返ることができない。
感情を抑え、なんとかユーリの言葉を理性で理解しようと務めた。
父から教えられた道は、最奥が王の部屋という話だった。
現在もそうである保証はどこにもないが、行ってみる他ない。
あとどれくらい進めばいいのか。
不意に、カマラが立ち止まった。
「変だわ」
ナリが振り返る。
「何がだい?」
「ほら、この扉」
カマラが指したのは、頭の上にある扉だ。
「さっきまでの扉は、全部開かないように留具がついていたのに、
ここはそれがはずれているわ。まるで誰かが出入りしたみたい」