さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ユーリが明かりを持ち上げて確認する。
戸口の隅と壁際にそれぞれ金具が取り付けてあり、
そこに縄を通して扉をふさぐという、
いたって単純なものではあったが、確かにそれがはずれている。
「カマラ。
さっきからいくつか扉があったと思うけど、全部留具がかかってたのかい?」
カマラははっきりと頷いた。
「最初にちょっと変だと思ったから間違いないわ。
だって普通、こういう抜け道は王族が緊急時に逃げ出すための通路でしょう?
それなのに、こちら側から留具をかけてしまったら、
部屋の内側から開かないんじゃないかしら」
ユーリの瞳が、氷のように冷たい静けさをたたえた。
一瞬、別人のように無表情になったユーリに、カマラは鳥肌が立った。
「なるほどね」
「どういうこと?」
「君が言った通りさ。この扉は部屋の内側から開けるものではないってことだね」