さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ゆうらりと揺れながら、次第に増す光。
中央から放射状に張り巡らされた見事なまでの円網(えんもう)の糸が
あふれる光に白く反射して存在を主張する。
その主であろう一匹の蜘蛛は、
眼下を通り過ぎる人間を見下ろしながら、優雅に糸をはいた。
「カマラは無事でしょうか」
珍しくナリの方から口を開いた。
「利口だから平気だろう。それにつかまっていればもっと騒がしくなってるはずだ」
先に逃がしたことをちょっぴり後悔したが、
全速力で立ち去ったカマラを追いかけるのは困難だった。
大声で呼びかけるわけにもいかず、
ユーリはカマラを探し出すよりも、サジと情報を交換するほうを選んだ。
歩きながらお互いの話を簡単に済ませ、
レイラの様子が気にかかるというサジの言葉で部屋を訪れたのだった。
・・サジの勘が大当たりだったわけだ。