さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
レイラはすでに消えた後だった。
「ナリ」
「はい」
ナリは背筋を正した。
「サジと俺、どっちが先に結婚できるかなぁ。
俺、今までサジには全敗だから、今度こそ勝てると思ったんだけど、
急がないとやばいかも」
「はぁ」
何がしかの命令を期待したナリは、内心、“この非常事態に何の話だよ!”と突っ込みつつ、
ユーリの人生相談に真剣に回答すべきかどうか、悩んだ。
歩きながら散々迷った挙句、ナリは、
ぽつぽつと体に似合わぬ子ねずみのような声を出した。
「では、急ぎましょう!」
精一杯考えて、可でも不可でもない彼なりに一生懸命の回答のつもりだった。
「え?何を?」
ユーリはぽかんと口を開く。
この人に将来を託して大丈夫なのだろうか。
ナリは不安な気持ちになった。