さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
快晴。
もともと雨が少なく、一年中晴れていることの多いリア国においても、
見渡す限りの空が、青一色で塗りつぶされていることは珍しい。
雲ひとつ見当たらない空の下、4頭の毛並みのいい馬に引かれた豪華な馬車が、
リア国の王が住む都へ向かって、軽快に歩みを進める。
その馬車の中で、レイラは目を閉じたまま小刻みに震える体と格闘していた。
・・大丈夫。きっと皆を助け出せるわ。
何度も繰り返す。
もちろん、なんの保証もないし、有効な手段を思いついているわけでもない。
・・まずはソリャン王子に見抜かれないように、頑張ろう。
レイラは自分に言い聞かせるように何度も心の中で繰り返す。
ソリャンというのは、レイラたちが住んでいるリア国の王子の名前である。
もっとも、そのことをレイラは捕らえられるまでまったく知らなかったのだが。
レガ国とリア国という二つの国の国境付近に住んでいるレイラにとって、
国の王子の名前など特に必要な知識ではなかった。
空や大気から読み取る天気の予想と、穀物からパンを作るまでの方法と、
家族を笑顔にする方法を知っていれば生きていくには事足りた。