さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「な・・・に。殺す?」
刺青だとか、王位継承者だとか、わけのわからない話だ。
けれど、殺す?誰が、誰を?
レイラの顎が、細かく震え始めた。
動揺した様子に、ソリャンは蕩けるような微笑を浮かべた。
「なんだ、そこは聞いていなかったのかい?
じゃあひょっとして、ミゲルが王直属の、暗殺専門の兵士の頭だったことも知らない?」
レイラの顔色が変わったのを見て、ソリャンは高笑いをした。
「あはは。これはおもしろいや。
ミゲルはね、王命で君を殺すはずだったのに、そうせずさらって逃げたんだよ。
雪の降る印象的な夜だったな」
「そんなの嘘です!お父さんが、私を殺すはずない!」
「本当さ。
あぁ、でも王命ってのは嘘だけどね。命令を出したのは、僕なんだ」
きらきらと輝く瞳は、今まででいちばん生き生きと誇らしげに見える。
レイラは瞬きもできず、長いすに斜めに座ったままソリャンの独白を聞いていた。