さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「王の書いた暗殺命令書を手に入れて、名前だけ君に書き換えて偽造したんだ。
君を殺したところで王が怒り、ミゲルを処刑する、ってばっちりな計画だったのに、
どこで気づいたのか、ミゲルは君を殺さずさらって逃げたのさ」
ソリャンは片側の唇を持ち上げ、ふん、と鼻をならす。
「とっくに死んでると思ってたのに、
まさか君という切り札を切って堂々と城へ乗り込んでくるとはね。
さすが、“氷の殺人兵”と呼ばれた男だ」
そうそう、と言いながら、ソリャンは一瞬ハスナを振り仰いだ。
「ハスナも、君の父親とは既知の間柄さ。師弟ってやつ?」
「う、そ・・・です」
力なく否定の言葉を述べる。
許容範囲を超えた内容は、もはや何を否定すればいいのかすらわからない。
レイラは、一つだけ矛盾を思いつき、喉を振り絞って声を出した。
「もし仮に、父が人を殺す役目を持っていたとしても、
王女がさらわれたのは、14年前。ソリャン様は、6歳ではありませんか」
6歳の子どもが自分の異母妹を殺そうとするなんて、ありえない。