さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

ぼんやりとしていたソリャンの瞳が、過去への邂逅を終え再び生気を取り戻す。

ソリャンは自嘲ぎみに笑うと、


「もっとも、父は大勢の才あふれる男子ではなく、

たった一人産まれた女の君を、跡継ぎに据えたわけだけどね」


レイラの涙に濡れた前髪を、そっとはらった。


「うそ、です」


自分自身に言い聞かせるように必死で出した声は、

もはや、ソリャンの耳には届いていなかった。


「さて、君に訊きたいことがあるんだ。正直に答えてほしいな」


すでに、ソリャンはいつもの笑みに戻っている。

目だけが笑っていないからだ、とレイラはソリャンの笑顔に恐怖した原因に気づいた。


「サジを使って、君は、いや、ミゲルが、かな。

本当は何をする気だったんだい?」


「え?どういう意味ですか」


ごちゃごちゃと乱雑に積まれた荷物の中から貴重品を見つけ出したように、

サジの名前がはっきりと心に響く。

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