さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
俯き、はぁ~と長いため息をつくソリャン。
その後ろに、微動だにせず立っているハスナの姿がある。
レイラは、皆が父の事を隊長と呼んでいた事を思い出した。
大工なのに変だな、と思ったことがある。
思えば、ミゲルとカマラはそっくりだ。
金色のまっすぐな髪質も、すっと通った鼻筋も。
だが、自分は・・・。
嘘だと心で否定しても、頭の中の奥深いところでは、
ソリャンの話が事実なのだろうと認めている自分がいる。
顎の先から、また1滴、レイラの手の甲に雫が滴り落ちた。
じっとそれを眺めていたレイラの視界に、
再びソリャンの瞳が割り込んでくる。
「でも、まだサジがいる。彼に僕の配下になるよう説得してくれないかい?
そうすれば、君をこのまま僕の妻として、贅沢な暮らしをさせてあげられる」
レイラは我に返った。
唇を噛み締めて、ぎゅっと瞳を閉じる。
腹に力を込めて、精一杯の言葉を空気にのせた。
「できません。サジは父とはなんの関係もありません!」