さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「じゃあ何者?」
ソリャンの唇から笑みが消える。
「知りません!」
膝が小刻みにリズムを刻んでいる。
その上に乗せた手も同じように波打った。
体の震えをとめることはできないが、目は閉じずに正面からソリャンを見据えた。
自分のことに、サジを巻き込みたくはなかった。
ソリャンはレイラの頬をひと撫でし、ゆっくりと立ち上がる。
「強情だね。なら、仕方ないな」
その声には、一欠けらの優しさもない。
ソリャンは振り返りハスナに目配せする。
命令を待ちわびていたハスナがさっと頭を下げ、レイラに足先を向けた。
・・サジ、さようなら。
ハスナの剣を抜く不気味な音が、レイラの鼓膜を振るわせた。
(つづく)