さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ハスナはレイラに振り下ろしかけていた剣で、
自分めがけて飛んできた小刀を跳ね除ける。
キン、と高い金属音に続き、ドス、と鈍い音がして壁に小刀が突き刺さった。
人影が突風のように部屋を横切ると、レイラとハスナの間に収まった。
ぼやけていてもその背中は、見覚えのあるものだった。
忘れようとしても、忘れることができないたくましい背中。
「・・・サジ」
「無事だな」
「う、うん」
サジは振り向くことなく、剣を構えている。
レイラは袖口で目頭をぐいと拭いた。
最小限の言葉しかかけないのが、いかにも彼らしいとレイラは微笑んだ。
・・助けに来てくれたんだ。
胸がいっぱいで、言葉にならない。
もう一度サジの名前を呼ぼうと口を開きかけた時、
大きな高笑いがこだまして、レイラの緩みかけた頬に再び緊張が走った。