さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ひとしきり笑うと、今度は静寂が流れる。
じっと閉じていた瞳をようやく開いたソリャンは、
さなぎから抜け出した蝶のように、美しく自信に満ち溢れている。
その美しさの中に、ひどくまがまがしいものを感じ取って、
レイラは総毛だった。
「やはり、お前がミゲルの跡を継ぐ者だったというわけか。
すばらしい!すばらしいよ、サジ」
乾いた拍手がソリャンの両手の中で一定の拍動を刻む。
「どうだい、サジ。僕と手を組まないかい?
ミゲルは死んだんだ。君がレイラを守る必要はもうないだろう?
いや、必要なら彼女はこのまま城の中で幸せに暮らせばいい。
君は僕の部隊の頭にしてあげるよ。君のような人間が僕の一番近くで仕えられるんだ。
どうだい?悪くない話だろう?」
ソリャンの言葉に、サジが眉をひそめ、
ハスナの瞳がわずかに揺れた。
「悪いが、貴様の部下になるなどごめんだな。
それに、貴様は一つ大きな勘違いをしている」