さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「勘違い?」
ソリャンの疑問の声に答えるかのように、開いた扉からジウチが姿を見せた。
ジウチは両手を小さく上に上げ、怯えるような視線をソリャンに投げる。
その首元には、使い込まれた短剣が光っている。
「そうよ。勘違いしてるわ。父さんは生きてる。
もちろん私もよ!」
ジウチの背中から響いた声に、レイラは大きく目を見開いた。
幼い頃からずっと傍で聞いた声を間違うはずがない。
ある時は叱り、ある時は慰めてくれた母のような暖かな声を。
「お姉ちゃん!」
そこにはレイラの姉であるカマラの姿があった。
ジウチの片腕を後ろにねじり上げ、短剣を手にしている。
「レイラ」
かろうじて震える声を抑え、カマラはレイラに微笑んだ。
思わず駆け寄ろうとして、レイラは、サジの長い腕に行く手を阻まれた。
カマラとサジに挟まれたような格好になり、
ハスナは剣を構え、ソリャンを庇うように前へ進み出ている。
その顔は険しく、さきほどまでの余裕はみじんも感じられない。