さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

背中から罵声を浴びせられ、ハスナは目を伏せた。

それでもサジに向けた剣を下ろそうとはしない。

ふいにレイラは、彼女の硬質な瞳にうっすらと膜がかかったように見えた気がした。


その時、


「ソ、ソリャン様!

私はハスナとは違います。どうかお助けください。

このカマラとかいう女が、漁獲量と売上を記した書簡を盗んで持っているのです」


ジウチが媚びるように、心もち前のめりになって叫んだ。


ソリャンは何か言いかけ、すんでのところで口元に手をやり言葉を飲み込む。

一瞬サジと視線が交差し、ソリャンはサジに自分の心を見透かされていると確信し、舌打ちした。


「なるほどな。その男はジウチの替え玉だったというわけか」


「え?どういう意味?」


サジの言葉の意味がまるで飲み込めず、レイラが言葉を発する。


「この男は、ジウチ王の偽物だったというわけだ。

本物の王は・・・おそらくソリャンに殺されたのだろう」



< 281 / 366 >

この作品をシェア

pagetop