さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
背中から罵声を浴びせられ、ハスナは目を伏せた。
それでもサジに向けた剣を下ろそうとはしない。
ふいにレイラは、彼女の硬質な瞳にうっすらと膜がかかったように見えた気がした。
その時、
「ソ、ソリャン様!
私はハスナとは違います。どうかお助けください。
このカマラとかいう女が、漁獲量と売上を記した書簡を盗んで持っているのです」
ジウチが媚びるように、心もち前のめりになって叫んだ。
ソリャンは何か言いかけ、すんでのところで口元に手をやり言葉を飲み込む。
一瞬サジと視線が交差し、ソリャンはサジに自分の心を見透かされていると確信し、舌打ちした。
「なるほどな。その男はジウチの替え玉だったというわけか」
「え?どういう意味?」
サジの言葉の意味がまるで飲み込めず、レイラが言葉を発する。
「この男は、ジウチ王の偽物だったというわけだ。
本物の王は・・・おそらくソリャンに殺されたのだろう」