さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「なんて悪党なの!それで一国の王子だなんて!」
呆然として声の出ないレイラに代わるようにカマラが声をあげる。
「ふん、まったく、能なしどもめ!
愚かな人間を家臣に持つとこれだから困る。
簡単に尻尾を出して」
ソリャンは鼻をならし、自分をかばうハスナの足元めがけて唾を吐いた。
自分の足首にねっとりとしたものを感じ、ハスナの目がわずかに揺らいだ。
それでもソリャンを振り向こうとせず、ハスナはすぐに敵意をむき出しにした目をレイラたちに向ける。
その瞳にはあきらめの色はなく、あくまでもソリャンを背にかばい、
窮地を脱する機会をうかがっているようだった。
・・ひょっとして、ハスナさんはソリャン様のことが。
ハスナの様子をじっと見ていたレイラは無意識に胸に手を当て、ぎゅっと衣を握りしめた。