さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
しまった、とサジが剣を止めたのは、すでに手ごたえを感じた後だった。
レイラが瞬く暇もない、刹那のこと。
壁に飛んだ血しぶきは、予想したソリャンのものではなく。
「ハス、ナ?」
その場のだれよりも早く声を発したのは、ソリャンだった。
「ばか、な。そんな馬鹿な!!」
背中からのおびただしい量の出血が、もはや彼女が絶命寸前であることを示している。
ソリャンは、自分に倒れかかるハスナの体重が徐々に重くなっていくのを感じた。
「ハスナ!ふざけた芝居をするな!さっさと起きて、私を守れ!
お前は・・・お前だけは、最後まで私についてくると約束したろう!」
それは、ジウチに見せた冷酷さとは明らかに別の種類のものだった。
その時、複数の足音が近づきカマラの背後で勢いよく扉が開いた。