さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
・・レイラ様はジマール様に見捨てられたのだろうな。
小柄な兵士は、一度だけジマールとレイラを遠目に見たことがあった。
街に出る二人の行列の警護、というか、街の人間たちの列を整理するというような地味な役目であったが、
二人の親子は噂にたがわず、本当に仲がよさそうに思えた。
あれほど深くみえた親子の愛情を、あっさりと断ち切ってしまうのだから、
リア国の王は、やはり噂どおり相当に冷酷な方なのだろう。
だからと言って、たかが一兵士である自分たちに情勢を変えるだけの力も情熱もない。
ただ命ぜられた仕事をたんたんとこなすだけ。
次の街を越せば、リア国王の直轄地に入る。
直轄地に入れば、少なくとも役目は半分終わったようなものだ。
小柄な兵士は、一瞬馬車に目をやったが、すぐにそらした。