さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「ヴィサージェ様!
あぁ、ヴィサージェ様!ご無事ですか?」
ユーリのあとから続々と兵が姿を現す。
その先頭にいたナリが、開口一番、主の身を心配して声を張り上げた。
「ヴィサージェ様、だと?」
王直属の赤いマントをはおり入ってきた兵士が、自分ではなく別の人間の名前を呼ぶとは。
ソリャンはハスナを膝に抱いたまま、顔だけを戸口に向けた。
よく見ると、入ってきた兵の顔に見覚えのあるものが一人もいない。
「ヴィサージェ。そうか、貴様、レガ国の・・・」
どうりで、見事な銀髪に覚えがあるはずだ、とソリャンは思った。
直接見たことはなくても、しょっちゅう報告を受けている。
レガ国の王子は、見事な銀髪で女のような甘い顔をしているが、
剣の腕は確かで、人望もある。と。
・・人望か。ふん、私とは正反対だな。
だが。