さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

「ヴィサージェ様!

あぁ、ヴィサージェ様!ご無事ですか?」


ユーリのあとから続々と兵が姿を現す。

その先頭にいたナリが、開口一番、主の身を心配して声を張り上げた。


「ヴィサージェ様、だと?」


王直属の赤いマントをはおり入ってきた兵士が、自分ではなく別の人間の名前を呼ぶとは。

ソリャンはハスナを膝に抱いたまま、顔だけを戸口に向けた。

よく見ると、入ってきた兵の顔に見覚えのあるものが一人もいない。


「ヴィサージェ。そうか、貴様、レガ国の・・・」


どうりで、見事な銀髪に覚えがあるはずだ、とソリャンは思った。

直接見たことはなくても、しょっちゅう報告を受けている。

レガ国の王子は、見事な銀髪で女のような甘い顔をしているが、

剣の腕は確かで、人望もある。と。



・・人望か。ふん、私とは正反対だな。

だが。





< 291 / 366 >

この作品をシェア

pagetop