さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
・・これほど大量の侵入者に気づかないとは、城外への抜け道はふさいでおくべきだったな。
ソリャンはふと自嘲するように唇を緩めた。
腕に抱いてある女の体はまだ温かい。
サジはその気になれば、一瞬でソリャンの命を奪える距離で、
しかし振り上げることはせず、剣の切っ先を下ろした。
「ソリャン。お前の負けだ。これ以上、無駄な血を流すな」
張り詰めた緊張のなか、沈黙が流れた。
「いや、負ける気はないよ」
ソリャンは幽霊のようにふらりと立ち上がると、
硬質な瞳を閉じて、自分自身に言い聞かせるようにつぶやいた。
「負けは、ない」