さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
サジの眉間が、わずかにしわを刻んだ。
ソリャンはハスナを横抱きに抱え、ゆっくりと後ずさる。
ふいに、思い出したようにサジの後方に目をやった。
赤い髪をした少女が、涙をためた瞳で自分を見つめている。
・・妹、か。
ソリャンは自分の心にふたをするように、もう一度目を閉じた。
再び視界が開けた時、その目に迷いはなかった。
壁に掛けてある明りを手に取ると、レイラの方に向けて思い切り投げつける。
きゃっ、と悲鳴が上がったかと思うと、床に投げ出された炎がレイラの衣のすそを焦がし始めた。
「レイラ!」
サジはレイラの衣を剣で引き裂くと、
彼女の体を自分の腕に抱きとめるようにして炎から遠ざけた。
レイラの白い肌が、すすけて黒く薄汚れている。
「怪我はないかっ!」
「だ、大丈夫。驚いただけ」