さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
間近で見るサジの瞳に吸い込まれそうな気がして、レイラの胸がとくんとなった。
そうか、と低く呟いたサジの声に、急に恥ずかしさがこみ上げる。
自分の腰に回るサジの手が、妙にやさしく感じるのは気のせいだろうか。
赤くなって俯くレイラの頬に、つ、と冷たい空気が触れた。
「サジ!あの王子が!」
ユーリが叫んだ時には、すでにソリャンの体は壁に現れた空間に飲み込まれるところだった。
元通りに閉じた壁がソリャンの姿を隠す。
すぐにナリが駆け寄り閉じてしまった壁を懸命に叩いたが、
剣が壁にぶつかって火花が散るだけで徒労に終わった。
「おい!早く追わないと、このまま城外へ出ちまうぞ!
ここも外の通路へつながってるんだろう?」
ユーリが、いつものように機敏に動かないサジを咎めるように睨んだ。
「いや、それよりも城の人間を全員外へ出せ」
「はぁ?」
「城の周りは水が引いてあるから、堀の外まで出られれば大丈夫だろう」
「あのなぁ、お前、何を言ってる・・・ん?」
ユーリは、親友の意味不明な言動にではなく、
鼻をつくような臭いをかぎ分けて、眉をしかめた。
何かが焼けるような焦げ臭いにおい。
その方角に目を向けると、壁の隙間から幾筋かの白い煙が漏れ出し始めた。
まさか。