さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
リア国の城が焼け落ちてから、三(み)月が流れた。
サジたちの迅速な行動により、奇跡的に犠牲者は出ずにすんだ。
城の主以外は。
「レイラ、じゃなくて、レイラ様。
おはようございます」
姿勢を正し、朝の挨拶を告げたカマラが部屋のすみに控える。
髪を一つに結い、その胸には赤い衣に刺繍された太陽を模した金糸が光っている。
「お姉ちゃん。様はやめてって言ってるのに」
部屋にいた侍女は、二人の雰囲気を察すると、頭を下げ部屋を後にした。
誰もいなくなると、カマラは初めて頬を緩め苦笑しながらレイラに近づいた。
「あなたが女王様になるなんてねぇ」
「まだちゃんと即位したわけじゃないよ」
「でも、決めたんでしょう?」
「それは、そうだけど・・・」
言いながら、レイラは瞳を伏せる。
その拍子に、長いまつげが、パサリと揺れた。