さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「レイラ。嫌なら、無理する必要ないのよ?
私と一緒にどこかへ逃げる?」
カマラは、目の前でさびしげな顔をする妹と、
薄情な父の顔を思い出して天秤にかけ、即座に妹の味方をしてやろうと拳を握った。
『このままではリア国が滅びる』
誰ともなく言い出した台詞に、
父ミゲルがレイラの素性をばらした時には、とびかかって殴ってやろうかと思った。
14年間も娘として育てたレイラを、あっさりとリア国に差し出したのだ。
「でも、形だけでも私がいないと、みんなが困るのでしょう?」
レイラは何度となく口にした言葉を、自分に確認するようにつぶやいた。
ソリャンが次々に王族を暗殺していたため、
王の妃数人と、各地から人質として連れてこられたソリャンの妃以外、王族が一人もいないのだ。
独裁をしいていたためか、様子見をしているのか、
家臣の誰もがレイラが偽物だとののしることもなく、王位につくことに反対もしなかった。
・・まったく、父さんは何を考えているのかしら。