さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

「レイラ。嫌なら、無理する必要ないのよ?

私と一緒にどこかへ逃げる?」


カマラは、目の前でさびしげな顔をする妹と、

薄情な父の顔を思い出して天秤にかけ、即座に妹の味方をしてやろうと拳を握った。


『このままではリア国が滅びる』

誰ともなく言い出した台詞に、

父ミゲルがレイラの素性をばらした時には、とびかかって殴ってやろうかと思った。

14年間も娘として育てたレイラを、あっさりとリア国に差し出したのだ。


「でも、形だけでも私がいないと、みんなが困るのでしょう?」


レイラは何度となく口にした言葉を、自分に確認するようにつぶやいた。


ソリャンが次々に王族を暗殺していたため、

王の妃数人と、各地から人質として連れてこられたソリャンの妃以外、王族が一人もいないのだ。


独裁をしいていたためか、様子見をしているのか、

家臣の誰もがレイラが偽物だとののしることもなく、王位につくことに反対もしなかった。



・・まったく、父さんは何を考えているのかしら。



< 299 / 366 >

この作品をシェア

pagetop