さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
姉がどれくらい行動力のある人間かよく知っているレイラは、
あわてて話を遮った。
「あの!大丈夫だから、何にもしないで?」
「だって、明日帰ってしまうのよ?
何か約束とかしてあるの?」
レイラの首が力なく左右に揺れると、髪の毛がひと房さらりと流れた。
「なら、せめて帰る前に約束だけでもしておきなさいな」
「いいの。サジは私のことなんてなんとも思ってないから」
本当に大丈夫だから、とさみしそうに微笑むレイラの顔を見ると、
どうにかしてやりたいという思いが心の底から湧いてくる。
カマラは部屋を出る最後に付け足した。
「いいわ。いざとなれば、私がレガ国からサジをさらってきてあげる!」
「お、お姉ちゃん!!」
やめて、というレイラの悲鳴のような叫び声は、
無情にも閉じた扉の音にかき消された。