さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

「サ、サジ!!」


考えることもなく、勝手に体が動いた。

窓を開けて声をかけると、気付いたサジが馬から降りて近づいてくる。

なんでもないその動作の一つ一つが、やけに優雅に見えて、

レイラの鼓動が早鐘を打った。


「やけに早いな」


「う、うん。あんまり眠れなくて」


すっとサジの手が伸び、レイラのあごを持ち上げる。

長い間外にいたのか、サジの指先はひんやりと冷たい。


「少し痩せたか?それに、この、くま。

何か心配ごとでもあるのか?王位を継ぐことなら、難しく考えなくても大丈夫だ」


目の下を親指でなぞられ、レイラはぴくりと体を震わせた。

眠れない理由は、国を憂えてのことだけではない。


しかも、大丈夫と言われたところで、そんなはずがないとも思う。

それでもなぜだかサジが言えば、それは真実になるような気がして、

レイラは素直にうなずいた。


< 305 / 366 >

この作品をシェア

pagetop