さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「サ、サジ!!」
考えることもなく、勝手に体が動いた。
窓を開けて声をかけると、気付いたサジが馬から降りて近づいてくる。
なんでもないその動作の一つ一つが、やけに優雅に見えて、
レイラの鼓動が早鐘を打った。
「やけに早いな」
「う、うん。あんまり眠れなくて」
すっとサジの手が伸び、レイラのあごを持ち上げる。
長い間外にいたのか、サジの指先はひんやりと冷たい。
「少し痩せたか?それに、この、くま。
何か心配ごとでもあるのか?王位を継ぐことなら、難しく考えなくても大丈夫だ」
目の下を親指でなぞられ、レイラはぴくりと体を震わせた。
眠れない理由は、国を憂えてのことだけではない。
しかも、大丈夫と言われたところで、そんなはずがないとも思う。
それでもなぜだかサジが言えば、それは真実になるような気がして、
レイラは素直にうなずいた。