さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
サジの広い背が、はっきりと見えなくなる。
レイラは手の甲で、目元を繰り返しぬぐう。
サジの足取りは軽快で、躊躇する様子もない。
振り返らないその背中に、
自分が勝手に何かを期待して、そして勝手に絶望しているのだとレイラは思った。
・・ばかな私。このままでいいの?本当に?
「ま、待って!!」
大きく叫んだつもりの声は、かすれて小さかった。
けれど、サジはその声に反応して、立ち止った。
「私、サジに聞いてほしいことが」
あるの、と言い終わらないうちに、
窓から身を乗り出したレイラの体が、均衡を崩して前のめりになった。
あ、という声が上がるのと、体が地面へと投げ出されたのがほぼ同時だった。
「きゃあっ!!」