さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
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突然、ガタンという音がして、前触れもなく馬車が停車した。
声をかけない限り、決して顔を見せるなとジマールに言われた通り、
レイラはじっとしていた。
少し前に休憩を取った時は、兵士が馬車から下りるようにと合図をよこした。
だから今度もそうなのだろうと、レイラは外からの合図を待った。
だが、今度はいくら待っても声がかからない。
それどころか、何かが激しくぶつかるような音が聞こえて、レイラは不安になった。
「レイラ様」
ふいに扉越しに自分を呼ぶ声がする。
「は、はい!」
上擦った声で返事をすると、
「もう少しで次の街に着きます。
そこで最後の休憩を取りますので、それまでご辛抱ください」
ゆったりとした男の声がした。
物腰の柔らかい若者を連想させるような声。
・・聞いた事の無い声だったような気がするけど。