さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

***

突然、ガタンという音がして、前触れもなく馬車が停車した。


声をかけない限り、決して顔を見せるなとジマールに言われた通り、

レイラはじっとしていた。

少し前に休憩を取った時は、兵士が馬車から下りるようにと合図をよこした。

だから今度もそうなのだろうと、レイラは外からの合図を待った。

だが、今度はいくら待っても声がかからない。

それどころか、何かが激しくぶつかるような音が聞こえて、レイラは不安になった。


「レイラ様」


ふいに扉越しに自分を呼ぶ声がする。


「は、はい!」


上擦った声で返事をすると、


「もう少しで次の街に着きます。

そこで最後の休憩を取りますので、それまでご辛抱ください」


ゆったりとした男の声がした。


物腰の柔らかい若者を連想させるような声。



・・聞いた事の無い声だったような気がするけど。



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