さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
すぐに滑らかに馬車が移動を始めたので、レイラはふっと息を吐いた。
声に聞き覚えがないも何も、皆見知らぬ兵士たちばかりだ。
聞いたことのない声、というよりは、しゃがれた隊長の声ではないとわかっただけのことだった。
まったく面識のない兵士たちの中で、唯一、隊長と呼ばれる男だけは見覚えがあった。
牢に入れられていた時に、ジマールの供をしていた男だ。
隊長以外は自分に話しかけることもなかったので、
さっきは初めて聞く声に少しばかり驚いたが。
レイラは汗ばむ掌をぎゅっと握り締めた。
父の怪我の事。家族が盗賊であった事実。
牢へ繋がれたままの家族。
そして、ソリャン王子のもとへ嫁ぐ自分・・・。
静かな時間は、レイラに悪い想像をもたらせる。
レイラはぶるぶると首を横に降り、頭の中にへばりつく悪夢を追い払った。
・・大丈夫。必ず皆と一緒に元のように楽しく暮らすの。
絶え間なく心に言い聞かせていなければ、そのまま泣き出してしまいそうだ。
レイラは、どうすれば皆を助けることができるのか悩む中で、
一つだけ思いついたことについて、もう一度考えた。
王に会って、自分が脅された事を話せばどうだろう。