さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

『リア国に湖から潜入した時、協定を破って密漁をしている連中を見つけたっていったろう?

部下が連中を捕らえようって提案してきた時、カマラは泳がせて様子を見るべきだって言ったんだ。

勝手にやってることかどうか証拠を探して一網打尽にしないと、

トカゲのしっぽ切りになるってね。

案の定、そいつらはソリャンの命令で動いていた。


まぁ、俺ももちろんそうするつもりだったけどさ。

でも、暗闇の中で怖がりもせず、とっさにそんなこと言う女、他にいると思うか?』


いつも以上に饒舌になるユーリに、サジは含み笑いをした。


『では、頑張って王を納得させるのだな』


レイラの姉だといったところで、王族でも何でもない。

カイルはともかく、重臣たちを納得させることは容易ではないだろう。



・・たかが女一人のことでそこまで真剣になれるとは、ご苦労なことだ。

私にはとうてい真似できないな。



レイラに会いに行くようサジを促すために来たという最初の目的を忘れ、

ユーリは、どうやって求婚するべきか、いやその前に自分の身分を明かすべきか、

もしも失敗したらどうしよう、などと

はらぺこ狼のようにサジの周りをうろうろと歩き回る。


サジは、いつまでも続きそうな親友の恋愛相談をきり上げるために、適当な助言をした。


『きれいな髪だとでも褒めておけ。女は褒められると喜ぶ』


見上げた空にぽっかりと浮かんだ月に、レイラの顔が重なって見えた--。


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