さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
あの晩と同じように、月が自分を見下ろしている。
ユーリが自分に投げた言葉の意味。
サジはようやくそれを理解した。
確かな自覚とともに。
目の前で肩を震わせる小さな存在に、衝動的な何かが全身を貫く。
失いたくなくて、サジはそれを両腕の中に閉じ込めた。
「サ、サジ?」
急に抱きしめられて、レイラは居心地が悪そうにサジの胸の中でがさごそと身じろぐ。
細い肩、白い肌、紅潮した頬。
そのすべてが、サジを酔わせた。
感情豊かな親友に一本取られたようで、サジは知らず笑みをこぼした。
「ユーリは尻に敷かれそうだな」
「え?」
「いや、なんでもない」