さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
レイラの目頭から目尻へと、サジが親指の腹を滑らせた。
丁寧に涙をぬぐった手を、そのまま下に滑らせ、
レイラの両頬を包み込むようにして固定する。
どちらからともなく、吸い寄せられるように唇が重なりあった。
軽く触れた唇から、お互いの体温が伝わってくる。
わずかの間で離れた人肌が恋しくて。
現実なのだともう一度確認したくて。
レイラは、乞うように切なそうな瞳でサジを見上げる。
潤んだ瞳を自分に向けるレイラを見て、サジは心がざわめいた。
すっと通った鼻筋に、小さな赤い唇。
赤い髪の毛は、光をはらんで黄金のように燃える。
あと数年もたてば、この娘の魅力に誰もが振り向くようになるに違いない。
いまだ幼さの残る可憐な花のつぼみを、
誰もがそうと気づかぬうちに、自分が摘み取ってしまったことへ、少々の罪悪感を覚えるが、
それ以上にそのことに対して妙な高揚感を持っている自分がいる。