さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
その場の甘い空気を変えたいこともあって、
サジの胸を押し距離をとると、両手を組んで姿勢を正す。
「あ、あのね、サジ。一つお願いがあるの。
今度からは何かあったら隠さずに教えて?
お父さんたちが生きてたことだって、ちゃんと教えてくれればよかったのに」
サジは、一拍考えるように視線を空に向け、真顔で答えた。
「どうかな。レイラは顔に出やすいからな。
知られて困ることは教えないかもしれないな」
「なっ?!い、いじわる!!」
サジにつっかかろうと腕を振り上げ、左足を前に出す。
そのとたん、地面をつかむのにしくじった足裏が、平衡を欠き、体が大きく傾いだ。
恐怖に目を閉じたレイラは、
すんでのところですでに良く知る、たくましい腕に抱きとめられる。
またか、とあきれた声が降ってきて、レイラは自分でも情けなくて涙がにじんだ。
どうしていつもサジの前でドジを披露してしまうのか。