さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
と、突然視界がぐるりと回り、体ごと抱きあげられた。
「お前は、よほど私の腕が好きらしいな」
「あ、あのサジ。恥ずかしいから」
体をゆすり、わずかに抵抗を見せる。
だが、レイラの力など、サジにとっては風のようなものだ。
「どうせまた転ぶんだろう?
おとなしくしていろ」
涙目なくせに、むっとしたようなふくれっ面のレイラを見て、サジはぷっと吹き出した。
「ばかにしてるんでしょう」
「してない」
「してるわ」
「違う。愛しいから笑っただけだ」
そう言って、サジはにっこりとほほ笑んだ。
その、美しく整ったきれいな形の唇を緩やかに持ち上げて。
やっぱりサジはいじわるだ。
そんな風に言われたら、自分には勝ち目がない。
ゆっくりと降ってくる唇が、レイラの耳元で低い声を出した。
「地面にぶつかるたびに、お前の鼻が被害をこうむるようだからな。
これ以上低くならないように、私が一生見張っておこう」
暗に守ってやりたいのだと含ませ、
サジはレイラを抱きあげたままもう一度唇を寄せた--。
(つづく)