さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
扉が閉まると同時に、静寂が訪れる。
どう言おうか迷ううちに、サジが静かに口を開いた。
「本当、か?」
「倒れたのは、そのせいだって医師に言われて。
お姉ちゃんも、子供ができた時、同じだったって」
抱きあげられたままサジを見上げると、
まるで放心状態といった顔で、焦点の定まらない目をしている。
「サジ?」
まさか、喜んでもらえないのかと不安になり始めた時、
サジはまるで壊れ物を扱うように、そっとレイラを立たせた。
「抱きしめても、大丈夫か?
その・・・子供に障ったりはしないか?」
不安そうに自分を見つめるサジの顔が、妙におかしい。
誰かが見ても、いつもと変わらぬ顔だと言うに違いないが、
自分にははっきりとわかる。
これは、どうしてよいかわからなくて、戸惑っている顔だ。