さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「そっとね」
強く抱きしめられたくらいで、影響がないことは知っていたが、
珍しく優位に立ったことが楽しくて、ふざけるように言ってみた。
だが、サジは本当に、卵でも温めるようにふんわりと手を伸ばしてくる。
ともすれば、たんに寄り添っているだけのようにも思えるくらいだ。
冷静沈着なサジが、おろおろしているのがおかしくて、
レイラは今にも吹き出しそうになるのをこらえた。
サジは何度もレイラの髪の毛を梳くと、
その手を背中に回し、恐る恐る、という表現がぴったりなように撫でてくる。
そのかすかな刺激に耐え切れず、レイラはついに声に出して笑い始めた。
レイラの笑いの理由を理解できず、サジは手を止めて腕の中を凝視する。
「ごめんなさい。でも、くすぐったくて」
レイラは涙をぬぐいながら、あまりに素直なサジに笑いが止まらない。
いつもなら、ドジをしてクスリと鼻で笑われるのは自分の方なのだ。