さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ごくりという音と共に、ユーリの喉仏が上下に動く。
「お、俺?」
指で自分を指し示すが、サジはそれを無視して立ち上がる。
「明日は早い。もう寝るぞ」
一人でするりと寝台にもぐりこんでしまった。
「ちょっと待てよ!」
「こっちは私一人で大丈夫だ。助けたら連絡しろ」
壁を向いたサジの背中に、ユーリはため息を浴びせる。
「あ~、はいはい。わかったよ。
も~、ほんと昔っから言い出したら聞かないからなぁ。
あ~、ついてない。俺、剣の方はからっきしなのに」
剣“も”だろう、といういらぬ返事に、
ユーリはその声の主の背中を思い切りにらみつけた。
発散できないもやもやを打ち付けるように、
反対側においてある寝台に、勢いよく飛び込む。
ギシと寝台が沈む音がすると、うるさいぞ、という音楽が流れた。
(つづく)